北東部の州名の由来

まずは、アメリカが生まれた北東部から。
大西洋をわたってきた人々の故郷や、この土地に暮らしていた先住民の言葉が、州の名前にそのまま残っています。

メイン=「本土」
アメリカのいちばん北東にある州です。
名前の由来には、大きく2つの説があります。
1つは「本土」説。
メインの沿岸には大小たくさんの島が浮かんでいます。
船乗りたちが島と区別して、陸の側を「本土(the main)」と呼んだのが始まりだとされます。
もう1つは、フランスの「メーヌ地方」から取ったという説です。
英語の語源辞典ではこちらを有力とする見方もあり、州立図書館も「決定的な答えはない」としています。
州最大の都市ポートランドの名前は、のちに西海岸のオレゴン州へ受け継がれました。
メイン出身の人とボストン出身の人が、新しい町にそれぞれ故郷の名前を付けたがり、コイン投げで決めたと伝わっています。
ニューハンプシャー=「新しいハンプシャー」
イギリス南部のハンプシャー州にちなむ名前です。
1620年代にこの土地の権利を得た商人ジョン・メイソンが、長く暮らしたゆかりの地の名前を付けました。
ただし名付け親のメイソン本人は、一度も現地を訪れないまま亡くなっています。
ヴァーモント=「緑の山」
フランス語の vert(ヴェール=緑)と mont(モン=山)を合わせた名前で、州を南北に走るグリーン山脈から来ています。
日本でなじみ深いハウス食品の「バーモントカレー」は、この州に伝わる「りんご酢とはちみつの健康法」にちなんだ名前です。
マサチューセッツ=「大きな丘のあるところ」
先住民マサチューセット族の名前から。
彼らの言葉で「大きな丘のそば」という意味で、ボストンの南西にあるグレート・ブルーヒルを指していたとされます。
最後の s は英語の複数形で、「大きな丘のそばに住む人々」という部族の呼び名が、そのまま州の名前になりました。
ロードアイランド=「赤い島」
州政府の説明では、オランダの探検家アドリアン・ブロックが、岸辺の赤い粘土を見て「ロート・アイラント(赤い島)」と名付けたのが始まりとされます。
オランダ語の roodt(ロート)は「赤い」という意味で、これが英語風になりました。
Rhode は「道(road)」ではありません。
もう1つ、1524年にイタリアの探検家ヴェラッツァーノが、近くの島をギリシャのロードス島に似ていると書き残したことから、という説もあります。
どちらの説でも、もとは州の一部の島(アクィドネック島)の名前でした。
コネチカット=「干満のある長い川の土地」
先住民の言葉「クィネタクット」から。
「長い」「潮が満ち引きする川」「場所」を組み合わせた言葉で、州を流れるコネチカット川を指していました。
川の名前が、そのまま州の名前になった形です。

ニューヨーク=「新しいヨーク」
もとはオランダの植民地で、中心の町はニューアムステルダムと呼ばれていました。
1664年にイギリスがこの地を手に入れ、国王チャールズ2世の弟、ヨーク公ジェームズ(のちの国王ジェームズ2世)の称号にちなんで名前を改めました。
「新しいアムステルダム」から「新しいヨーク」へ。
「新しい○○」という形はそのままに、中身だけが入れ替わった名前です。
ちなみに州都オールバニも、同じジェームズのもう一つの称号「オールバニ公」から。
州の名前と州都の名前が、同じ人物の称号から来ているわけです。
ニュージャージー=「新しいジャージー」
1664年、ヨーク公ジェームズは手に入れた土地の一部を、友人のバークリー卿とジョージ・カートレット卿に譲りました。
名前は、カートレットの故郷であるイギリス海峡のジャージー島から。
運動着の「ジャージー」も、同じジャージー島で作られたニット生地が語源です。
ペンシルベニア=「ペンの森」
「ペン」は人の名前、「シルヴァニア」はラテン語で「森」。
1681年、国王チャールズ2世がウィリアム・ペンに土地を与えたときに付けられた名前です。
ペン本人は「シルヴァニア(森)」という名前を希望していました。
ところが国王が、ペンの父であるペン提督をたたえて「ペン」を付け足します。
この土地は、父が国王に貸していたお金を返す代わりに与えられたものでした。
ペン本人は、自分の名前を付けたと思われないか気にしていたと伝わります。
州最大の都市フィラデルフィアも、ペンが付けた名前。
ギリシャ語の「愛」と「兄弟」を合わせた「兄弟愛の街」です。
COLUMN
東の端と西の端、どちらも「本土」
■ 東の端:メイン州
アメリカの東の端にあたるのが、メイン州のクォディ岬。
「アメリカ最東端の半島」として、紅白しまの灯台が立っています。
■ 西の端:アラスカ州
一方、西の端にあるのがアラスカ州。
語源は先住民アリュート(アレウト)の人々の言葉 alaxsxaq(アラクシャク)で、「本土(大陸)」を意味するとされます。
島々から見た、向こう側の大きな陸地を指す言葉でした。
メインを「本土」説で読むなら、アメリカは東西の両端が、どちらも「本土」という名前の州になります。
東海岸の州名の由来は、動画でも詳しく解説しています。
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南部(大西洋側)の州名の由来
続いて、大西洋に面した南部の州です。
アメリカ政府(国勢調査局)の区分では、デラウェアとメリーランドは北東部ではなく「南部」に入ります。
意外に思う人も多いかもしれません。
この8州のうち6州は、イギリスの王・女王・王妃にちなんだ名前です。

デラウェア=「総督」
州の名前は、イギリスの貴族トーマス・ウエストにちなんで名付けられたデラウェア湾から来ています。
彼の称号が「デラウェア卿」でした。
面白いのは、デラウェア卿が務めたのは隣のヴァージニア植民地の初代総督だったこと。
人の名前が湾に付き、湾から川へ、川沿いに住む先住民(レナペ族)の英語での呼び名へ、そして州の名前へと広がっていきました。
メリーランド=「王妃」
英語の Maryland は「マリアの土地」。
イギリス国王チャールズ1世の王妃、ヘンリエッタ・マリアにちなみます。
1632年、チャールズ1世がボルチモア卿に植民地を与えたとき、王妃の名前が付けられました。
夫のチャールズ1世の名前は、このあと出てくる「カロライナ」に残っています。
ヴァージニア=「エリザベス1世のあだ名」
イギリスの女王エリザベス1世は、生涯結婚しなかったことから「ヴァージン・クイーン(処女王)」と呼ばれました。
ヴァージニアは「処女王の土地」という意味です。
この名前は、1584年にウォルター・ローリーが送り出した探検隊の報告で使われたのが始まりとされます。
探検隊が現地で耳にした先住民の地名「ウィンガンダコア」や首長の名前「ウィンギナ」の響きも、名付けに関係したという説があります。
1600年代のはじめには、スペイン領とフランス領を除く北アメリカ全体が「ヴァージニア」と呼ばれていました。
ウエストヴァージニア=「西のエリザベス1世のあだ名」
もともとはヴァージニア州の西部でした。
南北戦争のさなか、ヴァージニア州が合衆国を離れて南部の側についたことに西部の郡が反対し、1863年に35番目の州として加わりました。
実は、最初の州名案は「カナウハ」。
改めて投票した結果、44人中30人が「ウエストヴァージニア」を選びました。
ノースカロライナ=「北のチャールズ1世」
「カロライナ」は、チャールズのラテン語名カロルス(Carolus)から来た「チャールズの土地」という意味です。
1629年にチャールズ1世が南の土地を「カロラナ」と名付け、1663年には息子のチャールズ2世が改めて「カロライナ」とします。
つまり親子2代の王の名前が重なった州名です。
1729年までに南北に分かれました。
サウスカロライナ=「南のチャールズ1世」
由来はノースカロライナと同じ「チャールズの土地」の南側です。
ジョージア=「ジョージ2世」
1732年、イギリス国王ジョージ2世が植民地をつくる許可を出し、自分の名前を付けました。
独立する13の植民地のうち、最後にできた植民地です。
ヨーロッパの国ジョージアとは由来が別。
日本では2015年に、国のほうの呼び名を「グルジア」から「ジョージア」に変えたため、州と国が同じ名前になりました。

フロリダ=「花」
スペイン語の florida(フロリダ)は、正確には「花でいっぱいの」という意味です。
1513年、スペインのポンセ・デ・レオンがこの地にたどり着いたのは、ちょうど復活祭の時期でした。
スペイン語で復活祭を「パスクア・フロリダ(花の祭り)」と呼ぶことから「ラ・フロリダ」と名付けたとされます。
目の前に広がる緑と花の多い景色が由来だという説もあります。
COLUMN
州名になったイギリス王家の人々

■ チャールズ1世の一家だけで4つの州名
国王チャールズ1世と息子のチャールズ2世が「カロライナ」、王妃ヘンリエッタ・マリアが「メリーランド」。
もう1人の息子ジェームズは、王になる前の称号「ヨーク公」が「ニューヨーク」の由来になりました。
■ 王家から土地をもらった人の州も
王家の人ではありませんが、王家から土地をもらった人にちなむ州もあります(緑の枠)。
チャールズ2世がウィリアム・ペンに与えた土地が「ペンシルベニア」、ヨーク公ジェームズが友人カートレットに譲った土地が、カートレットの故郷ジャージー島にちなむ「ニュージャージー」です。
■ ルイジアナのルイ14世は、いとこ
王妃ヘンリエッタ・マリアは、フランス王家の出身。兄ルイ13世の息子が、ルイジアナの名前の由来になったルイ14世です。
イギリスとフランスの植民地の名前は、いとこ同士の名前だったことになります。
■ ジョージアも同じ家系
ジェームズ1世の娘エリザベスの家系から、ドイツのハノーヴァー家を経て、ジョージ1世・ジョージ2世が王になりました。
その一方で、ヴァージニアのエリザベス1世には子どもがなく、王位は親戚のジェームズ1世へ移っています。
東海岸の州名の由来は、動画でも詳しく解説しています。
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南部(中央)の州名の由来
続いて、ミシシッピ川の流域から西のテキサスまで。
先住民の言葉と、フランス・スペインの探検家が残した記録が重なり合う地域です。

ケンタッキー=「牧草地」
州名は、州内を流れるケンタッキー川の名前から。
もとは先住民の言葉ですが、どの言語のどの単語なのかは確定していません。
もっとも有力なのは、イロコイ語系(ワイアンドット族など)で「牧草地」「平原」を意味する言葉だという説です。
この一帯は複数の部族が狩りに使う共有の土地で、定住する村はなかったとされます。
一方で、チェロキー族の言い伝えとして「暗く血まみれの土地」という説も有名で、州のあだ名として広く知られています。
テネシー=「チェロキーの村の名」
チェロキー族の町「タナシ(Tanasi)」の名前から。
タナシは18世紀前半、チェロキーの政治の中心だった町です。
ただ、「タナシ」という言葉そのものが何を意味していたのかは、記録が失われていてわかっていません。
ユチ族の言葉で「川が出合う場所」を意味した、という説もあります。
アラバマ=「茂みを切り開く」
アラバマ川の上流に住んでいたアラバマ族の名前から。
チョクトー語の alba(アルバ=草木)と amo(アモ=刈る)を合わせた「茂みを切り開く人々」とする説が有力です。
ミシシッピ=「大きな川」
州名はミシシッピ川から。
オジブワ族の言葉 Misi-ziibi(ミシ・ジービ=大きな川)を、フランス人が書き留めたものです。

ルイジアナ=「ルイ14世」
1682年、フランスの探検家ラ・サールがミシシッピ川の流域一帯をフランス領と宣言し、国王ルイ14世にちなんで「ラ・ルイジアーヌ」と名付けました。
語尾は「〜の土地」を表すので、直訳すれば「ルイの土地」です。
当時のルイジアナは、今の州よりはるかに広い地域でした。
1803年にアメリカがこの土地をフランスから買い取り、国土はほぼ2倍に。
その範囲は今の15州(全部または一部)にまたがります。
これが「ルイジアナ買収」です。
アーカンソー=「南風の人々」
この土地に住んでいたクアポー族を、イリノイ族は「南風の人々」と呼びました。
これがアーカンソーという名前のもとです。
クアポー族自身は「下流に住む人々」と名乗っていたので、呼び名と自称で意味が違います。
綴りの ARKANSAS をよく見ると、KANSAS がそのまま入っています。
中西部の章で出てくるカンザスとも、もとは同じ言葉につながるとされます。
読み方をめぐっては意見が割れ、1881年に州議会が「綴りは Arkansas、読みはアーカンソー」と正式に決めました。
読みには先住民の呼び名の記憶を、綴りにはフランス人が残した歴史を、それぞれ受け継ぐための決定でした。
オクラホマ=「赤い人々」
チョクトー語の okla(オクラ=人々)と humma(フンマ=赤い)を合わせた言葉です。
名付けたのは、チョクトー族の学者で牧師、のちに首長となったアレン・ライト。
1866年の条約交渉の場で、先住民の土地の名前として提案しました。
州名は、先住民自身が考えた名前なのです。
テキサス=「仲間」
東テキサスに住んでいたカド族(ハシナイ族)の言葉 taysha(タイシャ=友・味方)から。
「やあ、友よ」というあいさつにも使われた言葉を、スペイン人が tejas(テハス)と書き取り、やがて土地の名前になりました。
1930年に定められた州のモットーは「Friendship(友情)」。
州名のもとの意味が、いまも州の言葉として受け継がれています。
中西部の州名の由来
続いて、五大湖のほとりから大平原までの中西部です。
ここからは、先住民の言葉に由来する州名がぐっと増えていきます。

オハイオ=「良い川」
州の南の境を流れるオハイオ川から。
セネカ族の言葉 ohi:yo’(オヒーヨ)に由来し、「良い川」という意味です。
「大きな川」と訳されることもあります。
日本でよく見る「美しい川」という訳は、この川を見たフランス人が「ラ・ベル・リヴィエール(美しい川)」と呼んだことから広まったものとされます。
インディアナ=「インディアンの土地」
英語の Indian(インディアン)に、「〜の土地」を表す語尾 -ana を付けた名前です。
1800年にアメリカ連邦議会が準州の名前に採用しました。

ミシガン=「大きな湖」
オジブワ族の言葉 mishigami(ミシガミ=大きな水・大きな湖)に由来し、もとはミシガン湖の名前でした。
その名のとおり、ミシガン州は五大湖のうち4つに接しています。
イリノイ=「ふつうに話す人」
先住民イリノイ族の名前から。
イリノイ州立博物館によると、最近の言語研究では、イリノイ族の言葉 irenweewa(イレンウェーワ=ふつうのやり方で話す人)が由来とされています。
これが隣のオジブワ族の言葉を通って ilinwe(イリンウェ)となり、フランス人が Illinois と綴りました。
1674年には宣教師マルケットが「人間・男たち」という意味だと記録しています。
日本で紹介されることのある「完全な人」という訳は、根拠が見つかっていない古い説です。
ウィスコンシン=「赤い岩を流れる川」
州名はウィスコンシン川から。
1673年にフランス人探検家マルケットが書き留めた「Meskousing(メスクーシング)」が、フランス風の Ouisconsin を経て Wisconsin になりました。
意味は、ウィスコンシン州歴史協会が紹介する「赤く横たわるもの」、つまり「赤い岩のところを流れる川」という説が有力です。
観光地ウィスコンシン・デルズでは、川が赤みがかった砂岩の間を流れています。
昔は「川の集まる場所」という訳が広く紹介されていました。
ミネソタ=「青空の様に澄んだ青色の水」
州名はミネソタ川から。
ダコタ族の言葉 Mni Sóta(ムニ・ソタ)で、mni は「水」。
後半の sota には2つの解釈があります。
1つは「空の色を映した」という意味。
ミネソタ大学のダコタ語の専門家は「水が空を映す土地」と説明していて、これはダコタの人たちが好む訳でもあるそうです。
もう1つは「白く濁った」という意味。
ダコタ族の女性が水に牛乳を垂らして、入植者に「濁った水」の意味を教えたという話が残っています。
アイオワ=「眠い人」
州名はアイオワ川、さらに先住民アイオワ族の名前に由来します。
「眠い人」という訳は、ダコタ族の言葉 ayuxba(アユフバ=眠たがりの人々)から来たという説によるもので、ほかの部族が付けたあだ名だったと考えられています。
アイオワ族自身は、自分たちを Báxoje(バホジェ=灰色の雪の人々)と呼んでいました。
冬、住まいから出る煙で雪がすすけて灰色に見えたことから、と部族は説明しています。
外からの呼び名と自分たちの名乗りが、まったく違う例です。
ミズーリ=「大きなカヌーの町」
先住民ミズーリア族の名前から。
アルゴンキン系の言葉で「丸木舟(木をくりぬいたカヌー)の人々」という意味で、ミズーリア族は丸木舟を巧みに操ることで知られていました。
ミズーリ州務長官の公式サイトは「大きなカヌーの町(の人々)」という訳を紹介しています。
同じサイトには、「ミズーリ=泥の水」はよくある誤解だ、という一文もわざわざ書かれています。
ノースダコタ=「北の友人」
ダコタ族の自称 dakhóta(ダコタ=友好的な・味方の)に由来します。
「友人」というより、「同盟を結んだ仲間」というニュアンスに近い言葉です。
ダコタ準州が1889年に北と南の2つの州に分かれました。
サウスダコタ=「南の友人」
由来はノースダコタと同じく、ダコタ族の自称「友好的な・味方の」です。
4人の大統領の顔を彫ったラシュモア山国立記念碑がある州です。
ネブラスカ=「平らな川」
州内を流れるプラット川の、先住民による呼び名に由来します。
オトー族やオマハ族の言葉で、どちらも「平らな水」という意味です。
おもしろいのは、いまの川の名前「プラット(Platte)」も、フランス語で「平らな」という意味であること。
先住民とフランス人が、それぞれの言葉で同じ特徴をとらえて名前を付けていたわけです。
カンザス=「風の人々」
州名はカンザス川から、さらに先住民カンザ(カウ)族の名前から来ています。
部族名の綴りは約125通りもあったと、州の歴史協会は伝えています。
意味について、カウ族の公式サイトは「風の人々(wind people)」と説明しています。
一方、カンザス州歴史協会は、意味ははっきりわからないという立場です。
南部の章のアーカンソー(南風の人々)も、同じ語源の流れにある言葉とされます。
西部の州名の由来
最後は、ロッキー山脈から太平洋岸、そして海の向こうのアラスカとハワイまで。
この章では、スペイン語から来た州名がぐっと増えます。

モンタナ=「山岳地帯」
スペイン語の montaña(モンターニャ=山・山地)に由来します。
1864年、ロッキー山脈にちなんで下院議員ジェームズ・アシュリーが提案した名前です。
次に紹介するワイオミングの名付け親も、実は同じアシュリーです。
ワイオミング=「川のほとりの平原」
先住民デラウェア族(レナペ)の言葉で、「大きな川のほとりの平地」を意味する言葉に由来します。
ただし、この名前はワイオミングの土地で生まれたものではありません。
もとはアメリカ東部、ペンシルベニア州にある「ワイオミング渓谷」の地名です。
1809年に発表された詩『ワイオミングのガートルード』で広く知られるようになり、1865年、アシュリーが西部の新しい準州の名前として提案しました。
東部の谷の名前が、はるか西の州の名前になったわけです。
コロラド=「赤い川」
スペイン語の colorado(コロラド=赤く色づいた)から。
州内を流れるコロラド川の名前が、そのまま州名になりました。
ニューメキシコ=「新しいメキシコ」
スペイン語の Nuevo México(ヌエボ・メヒコ)、そのまま「新しいメキシコ」です。
名付けたのは16世紀のスペイン人。
1563年ごろ、探検家フランシスコ・デ・イバラが「新しいメキシコを見つけた」と伝え、1581年の探検隊もこの名前を使いました。
メキシコが国として独立したのは1821年なので、州名のほうが約250年も先に生まれていたことになります。
「メキシコ」は、もともとアステカの人々(メシカ人)の本拠地、いまのメキシコシティ周辺の呼び名でした。
メシカという民族の名前から来たとされますが、その言葉自体の意味ははっきりしていません。
アリゾナと並んで、アメリカの「南西部(サウスウェスト)」とも呼ばれる地域です。
アリゾナ=「小さな泉」
有力なのは、先住民オーダム族の言葉 ali ṣonak(アリ・ショナク=小さな泉のある所)です。
これがスペイン語の地名「アリゾナック」になり、州名に受け継がれたとされます。
バスク語の aritz ona(アリツ・オナ=よい樫の木)から来たという説もあります。
ユタ=「山の民族」
この地に暮らす先住民ユト(ユート)族を、スペイン人が「ユタ」と呼んだことに由来します。
「山の民族」という訳は、西アパッチ族の言葉 yudah(ユダー=高いところに住む人)から来たとする説によるものです。
この地に入植したモルモン教徒が希望した州名は、実は「デザレット」。
ミツバチを意味する言葉でした。
認められませんでしたが、ミツバチは今もユタの州旗や州章に描かれています。
アイダホ=「太陽が昇る?」
1860年代、「先住民ショショーニ族の言葉で『山から太陽が昇る』という意味」と紹介されて広まった名前です。
和訳に「?」が付いているのは、この説明が本当ではなかった可能性が高いからです。
名前を推した人物の説明は響きがよく、連邦議会でも人気の候補になりました。
ところが、先住民の言葉ではなく作り話ではないかという疑いが出て、1861年にロッキー山脈にできた準州の名前は、別の候補だった「コロラド」に決まりました。
コロラド州に今も「アイダホ・スプリングス」という町があるのは、その名残です。
それでも名前は生き残り、1863年、今のアイダホの地に準州が作られたときに採用されました。
現在は、名付けに関わった人の造語(作った言葉)だったという説が有力です。
ほかに、キオワ・アパッチ族がコマンチ族を指して呼んだ言葉 ídaahę́(イダーヘ)が元になったという説もあります。
ネバダ=「雪をいただいた」
スペイン語の nevada(ネバダ=雪の積もった)から。
州の西側に連なるシエラネバダ山脈(雪をいただいた山脈)の名前に由来します。
ワシントン=「初代大統領」
初代大統領ジョージ・ワシントンにちなみ、1853年に連邦議会が準州の名前として付けました。
大統領の名前が付いた州はここだけです。
東海岸の首都ワシントンD.C.とは別の、太平洋に面した西の端の州です。
オレゴン=「謎の川の名」
州政府の公式資料も「由来はよくわかっていない」としている、珍しい州名です。
最初の記録は1765年。
イギリスの軍人ロバート・ロジャーズの探検計画書に、「先住民がウーラゴン(Ouragon)と呼ぶ川」として登場します。
西へ流れる「伝説の大河」の名前で、今のコロンビア川を指していたと考えられています。
説として知られるのは2つ。
1つは、フランスの古い地図でウィスコンシン川の名前が2行に分かれて刷られ、「ウアリコン」という西へ流れる川の名前に見えてしまったという説。
地名辞典『Oregon Geographic Names』は、これを最も妥当な説としています。
もう1つは、アルゴンキン語族の言葉 wauregan(ワウレガン=よい・美しい)から来たという説です。

カリフォルニア=「天国に近い伝説の島」
16世紀のスペインで書かれた小説に出てくる、架空の島の名前が由来です。
小説の中でその島は「地上の楽園のすぐそばにある」と描かれており、これが和訳の「天国に近い」のもとになっています。
スペインの探検家が、メキシコの西に延びる半島(いまのバハ・カリフォルニア半島)をこの島だと考えて名付け、その名前が北の土地にも広がりました。
アラスカ=「本土」
先住民アリュート(アレウト)の人々の言葉 alaxsxaq(アラクシャク)が、ロシア語の「アリャースカ」を経て英語になった名前です。
島々から見た「向こうの大きな陸地」、つまり「本土」を意味し、もとはアラスカ半島を指していました。
1867年、アメリカはロシアからこの土地を買い取りました。
いまでは全米最大の州です。
ハワイ=「故郷」
ポリネシアの人々の伝説上の故郷「ハワイキ」に由来するという説が有力です。
ハワイの伝承で島を見つけたとされる航海者「ハワイロア」の名前から来たという説もあります。
もとは一番大きなハワイ島の名前で、のちに諸島全体の名前になりました。
COLUMN
カリフォルニアは小説の中の島だった
■ 物語の中の「カリフォルニア島」
その小説は、スペインの作家ガルシ・ロドリゲス・デ・モンタルボが1510年ごろに書いた騎士道小説『エスプランディアンの武勲』。
物語の中のカリフォルニアは、女王カラフィアが治める、黄金と真珠にあふれた島として描かれています。
■ 地図の上でも、島だった
半島を小説の島だと考えた影響は大きく、17〜18世紀のヨーロッパの地図には、カリフォルニアが海に浮かぶ島として描かれ続けました。
「カリフォルニア島」と呼ばれる、地図の歴史でも有名なエピソードです。
■ 「カリフォルニア」という言葉のもと
言葉そのものは、アラビア語の「ハリーファ(カリフ=指導者)」をもとに作者が作ったという説が有力です。
西部の州名の由来は、動画でも詳しく解説しています。
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まとめ|州名には、アメリカが広がった順番が残っている
50州の名前を和訳して地図に並べると、東から西へ、はっきりした3つの層が見えてきます。
東の大西洋岸には、イギリスの王や貴族の名前が並びます。
女王エリザベス1世(ヴァージニア)、国王チャールズ1世(カロライナ)、ジョージ2世(ジョージア)、王妃ヘンリエッタ・マリア(メリーランド)。
植民地を作ったときの「名付け親」が、そのまま州名に残りました。
内陸に入ると、先住民の言葉が主役になります。
「大きな川(ミシシッピ)」「大きな湖(ミシガン)」「平らな川(ネブラスカ)」のように、川や湖の名前がそのまま州名になった例がとくに多く、50州のおよそ半分が先住民の言葉に由来します。
そして南の端のフロリダと、南西から西海岸にかけては、スペイン語の世界です。
「花(フロリダ)」「赤い川(コロラド)」「雪をいただいた(ネバダ)」。
スペインの探検家が見た景色が、そのまま名前になっています。
もうひとつ、ヨーロッパ編と同じく、外から呼ばれた名前と、自分たちが名乗った名前が違う例も見つかりました。
アイオワは外からは「眠い人」、自分たちでは「灰色の雪の人々」。
アーカンソーは外からは「南風の人々」、自分たちでは「下流に住む人々」。
ちなみに「アメリカ」という名前は、イタリアの探検家アメリゴ・ヴェスプッチから。
1507年、ドイツの地図製作者ヴァルトゼーミュラーが、彼の名前をもとに新しい大陸を「アメリカ」と世界地図に書き入れたのが始まりです。
大陸の名前そのものが、一人の人物の名前から来ていたわけです。
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