群馬はなぜ暑い?豪雪地帯なのに日本一暑い理由を地形で解説

群馬の平野の街並みと大きな温度計。なぜ群馬は暑いのか

2025年8月5日、群馬県伊勢崎市で41.8℃が観測されました。
日本の観測史上、いちばん高い気温です(2026年9月現在)。

ところが同じ群馬県の北部には、積雪が3mを超える地域があります⛄
片品村にいたっては、国が指定する「特別豪雪地帯」。
雪に埋もれる村と、日本一暑い街が、ひとつの県の中に並んでいるわけです。

なぜ、こんなことが起きるのか——。
先に結論を言ってしまうと、豪雪も猛暑も、犯人は同じです。
群馬をぐるりと囲む「山」なんですね。

冬に雪を降らせている山が、夏には熱を閉じ込めている。
その仕組みを、気象庁や国土交通省などの公的な資料をもとに解説します!

目次

日本一暑い街ランキング

コルクボードに貼られた「猛暑日」と書かれた紙とひまわりの飾り

まず、日本一暑い街を見ていきましょう。
気象庁が公表している「歴代全国ランキング」で、観測史上いちばん高い気温を記録した地点がこちらです。

全国順位地点最高気温記録日
1位群馬県 伊勢崎41.8℃2025年8月5日
2位静岡県 静岡/埼玉県 鳩山41.4℃2025年8月
4位群馬県 桐生41.2℃2025年8月5日
6位静岡県 浜松/埼玉県 熊谷 ほか41.1℃2018〜2026年
9位群馬県 前橋41.0℃2025年8月5日
出典:気象庁「歴代全国ランキング」(各地点の観測史上1位の値による)

全国トップ10のうち、3つが群馬県。
しかも1位・4位・9位の記録は、すべて2025年8月5日という同じ一日に出ています。

この日、群馬県内では5つの地点で40℃以上を観測しました。
県全体が、丸ごと熱せられていたことになります。

では、なぜ群馬なのか?

3つの理由で説明します。

理由① 都市の熱を運んでくる風(ヒートアイランド現象)

青い空と白い雲が広がる海辺の砂浜と波打ちぎわ

夏のよく晴れた日、陸は海よりも早く温まります。
その温度差が気圧の差を生んで、海から陸に向かって涼しい風が吹く。
これが海風です。

海に近い街は、この風のおかげで気温の上がり方が抑えられます。
逆に、海から遠い場所ほど風の到着が遅れ、気温が上がりやすくなる。

そして海風は、東京などの大きな都市を通ってくる間に暖められ、気温を下げる力を失っていきます。

なぜ、都市を通ると暖められるのか。
その答えが、ヒートアイランド現象です。

アスファルトやビルに覆われた地面は、土や草地とちがって水分をほとんど含みません。
土や植物なら、水が蒸発するときに周りの熱を奪ってくれます。
打ち水と同じ理屈ですね。
ところが舗装された地面には、その働きがないんです。

行き場を失った日ざしの熱は、そのまま地面と建物にたまっていきます。
そこへ冷房の室外機や自動車から出る排熱も加わる。
熱を抱えこんだ街の上を通り抜けるあいだに、海風はじわじわと温度を上げていくわけです。

群馬は関東平野のいちばん奥、北の端にあります。
海から届く風は、まず千葉や東京を通り、埼玉を越えて、ようやく群馬にたどり着く。
着くころには、もう涼しくありません。

関東平野という広い部屋の、いちばん奥の席。
そこが群馬なんですね。

東京湾から入った海風が東京・埼玉の市街地を通る間に温まり、関東平野の奥にある群馬へ向かう様子を示した俯瞰図
東京湾から入った海風は、都市部を通って関東平野の奥へ進むほど温まる(イメージ図)

理由② 熱がたまり続ける内陸性気候

海のそばの街では、昼は海から、夜は陸から、海陸風が入れ替わることで、たまった熱が運び出されていきます。
しかし群馬は内陸性気候のため、その働きがありません。

埼玉県環境科学国際センターも、海から離れた地域について「海陸風によって冷やされることを期待できない」と指摘しています。

逃げ場のない熱は、夜になっても居座ります。
同センターによれば、ヒートアイランド現象は、大気が安定して熱が地表近くにとどまる夜間ほど強く表れるそうです。
昼にたまった熱が夜のうちに逃げきらないと、翌朝はより高いところから気温が上がりはじめる。
猛暑日が続く夏ほど、この積み重ねが大きくなります。

理由③ 山から吹き下ろす熱風(フェーン現象)

そして最後のひと押しが、フェーン現象です。

風が山を吹き降りるとき、風下側では気温が上がります。
山を登る間に空気は水蒸気を雨や雪として落とし、乾いた状態で山を下りてくる。
乾いた空気は下降するときに温度が上がりやすく、ふもとに熱風となって届くのです。

湿った空気が山で雨や雪を落とし、乾いた空気となって群馬の平野へ下るほど温度が上がるフェーン現象の模式図
山を越えた乾いた空気は、平野へ下る間に温度が上がる(フェーン現象のイメージ図)

群馬は北と西を高い山に囲まれています。
北には新潟との県境をなす三国山脈、その主峰が標高1,977mの谷川岳。
西には長野との県境に、標高2,568mの浅間山がそびえます。

どちらを越えてきた風も、群馬の平野に吹き下ろすことになる。
フェーン現象が起きる条件が、地形としてそろっている県なんですね。

41.8℃を記録した2025年8月5日は、南から高気圧に覆われて長い時間日ざしが届いていました。
そこへ山を越える風が加わったことが、記録的な数字につながったとみられます。

海風が届かない。
熱が逃げない。
そこへ山からの熱風が吹き下ろす。
3つが重なった先に、41.8℃という数字がありました。

北部では3mの雪が積もる「特別豪雪地帯」

ここからが、群馬のおもしろいところです。

国土交通省の指定によると、群馬県では3市6町5村が「豪雪地帯」とされています。
みなかみ町、草津町、嬬恋村、長野原町、中之条町といった北部・西部の自治体。
そのうち片品村は、さらに雪の多い「特別豪雪地帯」に指定されています。

どれくらい降るのか、数字で見てみましょう。
みなかみ町の藤原では、2006年1月26日に積雪301cmを観測しています。
3mです。
1階の窓どころか、家がすっぽり埋まる高さなんですね。

日本一暑い街と、雪が3m積もる集落。
その距離は、直線でおよそ80キロほどしかありません。

雪に埋もれた群馬県北部の集落の道と、温度計の上がった夏の南東部の街並みを左右に並べた対比イラスト
同じ群馬県内にある、雪深い北部の山あいと、猛烈に暑くなる南東部の平野(イメージ)

前橋地方気象台も、群馬の気候をこう説明しています。
北部の山地では厳冬期に氷点下10℃以下まで下がる一方、南東部の平野部では盛夏におよそ40℃まで上がる、と。

理由は標高差です。
北部には2,000mを超える山々が連なり、南東部の平野は標高10m。
ひとつの県の中に、2,000m近い落差があるわけです。

冬の名物「からっ風」も、同じ山がつくっている

冬の群馬といえば、からっ風。
上毛かるたにも「雷(らい)と空風(からっかぜ)義理人情」と詠まれている、県の名物です。

この風の正体も、夏と同じ仕組みでした。

冬、大陸から吹く北西の季節風は、日本海を渡るときにたっぷりと水蒸気を含みます。
その空気が三国山脈にぶつかると、山を登りながら雪を降らせる。
谷川岳の周辺やみなかみ町に積もる雪は、こうして生まれます。

水分を落として山を越えた風は、からからに乾いています。
それが平野に吹き下ろしたものが、からっ風。
「赤城おろし」とも呼ばれます。

冬晴れの群馬の平野で、からっ風にススキと藍染めの布がなびき、軒先に干し大根が並ぶイラスト
日本海の水分を山で雪として落とした風が、乾いた「からっ風」になって平野へ吹き下ろす(イメージ)

数字にすると、この差がよく見えます。

前橋(群馬)新潟東京
年間の降雪量19cm139cm8cm
雪の降る日数26.1日90.5日8.5日
年間日照時間2,154時間1,640時間1,927時間
出典:気象庁 平年値(1991〜2020年)

山ひとつ隔てた新潟の年間139cmに対して、前橋は19cm。
そして日照時間は、新潟より500時間以上も長く、東京すら上回ります。

雪を山の向こうに置いてきた風が、群馬の平野に「冬でもよく晴れる空」を届けているんですね。
乾いた風は、干し野菜や織物といった群馬の産業とも深く結びついてきました。

群馬の地形を、もう少しだけ

紅葉に包まれた谷川岳の岩壁と青空
群馬と新潟の県境にそびえる谷川岳(標高1,977m)。三国山脈の主峰です

せっかくなので、この「山に囲まれた県」の姿を少し広げてみます。

北から西にかけて連なるのは、2,000m級の山々。
新潟との境には「魔の山」と呼ばれる谷川岳を擁する三国山脈、長野との境には活火山の浅間山、その北には草津白根山が並びます。

火山があるということは、温泉があるということ。
草津や万座といった名湯は、この火山活動の恩恵です。
夏の暑さをつくる山が、同時に日本有数の湯も湧かせている。

そして南東部に目を移すと、景色は一変して関東平野が広がります。
県庁所在地の前橋市も、県内最大の人口を持つ高崎市も、この平野の上。
県を縦断するように利根川が流れ、山の水を平野へと運んでいます。

最後にひとつ、不思議な話を。
海のない群馬県ですが、南東部の板倉町には貝塚が残っています。

町の資料によれば、離山貝塚から見つかった貝は、今から7,000〜8,000年前のもの。
当時は東京湾が古河のあたりまで入り込んでいた時代でした。
かつてこの土地には、たしかに海が来ていたわけです。

日本一の猛暑、国指定の豪雪地帯、名湯、そして海の記憶。
ひとつの県に、これだけの顔が詰まっている。

まとめ:群馬の暑さは、地形が書いた答え

群馬が日本一暑くなる理由を、もう一度3つに整理します。

  1. 海からの涼しい風が、都市の熱を吸収し(ヒートアイランド現象)、関東平野の奥に届くころには暖まってしまう
  2. 内陸性気候のため、たまった熱を海陸風が運び出してくれない
  3. 北と西の山を越えた風が、フェーン現象でさらに気温を押し上げる

海から遠く、その先を山にふさがれた土地。
この位置が、3つすべての土台になっていました。
そして冬に北部へ雪を降らせているのも、同じ山です。
豪雪地帯なのに日本一暑い、という矛盾に見えたものは、じつは矛盾ではありませんでした。
ひとつの地形が、季節によって別の顔を見せていただけなんですね。

日本一の暑さを体感したい人は少ないと思いますが(笑)、
冬の雪景色を眺めながらの温泉や、日本百名山が11座もそろう山々を楽しみたい方には、群馬はおすすめの場所です!

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参考にした資料

  • 気象庁「歴代全国ランキング」
  • 気象庁「過去の気象データ検索」平年値(1991〜2020年)/観測史上1位の値(藤原・みなかみ町)
  • 前橋地方気象台「群馬県の気候特性」
  • 熊谷地方気象台「暑さについて(暑さのデータ・暑くなる理由)」
  • 国土交通省「豪雪地帯・特別豪雪地帯指定地域」
  • 埼玉県環境科学国際センター「『ヒートアイランド』ってどんな現象?」
  • 板倉町「離山貝塚」

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